日本透析医学会雑誌
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維持透析中にアスペルギルス塞栓により出血性脳梗塞を引き起こした活動性全身性エリテマトーデスの1例
武田 敏也今田 聰雄堀内 篤木村 雅友前倉 俊治橋本 重夫秋山 隆弘栗田 孝
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1996 年 29 巻 4 号 p. 297-302

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抄録

症例は37歳の男性で1989年10月にネフローゼ症候群と診断されて治療を受けていた. その後腎機能の低下がみられ, 1992年7月から末期腎不全のために血液透析療法が開始された. 1994年10月に母親を提供者として生体腎移植を希望し当院へ転院してきた. 慢性腎不全の基礎疾患を知る目的で諸検査を施行した. その結果, 全身性エリテマトーデス (SLE) 由来の腎不全であると診断した. また同時にSLEの活動性が認められ, ステロイドパルス療法を含む副腎皮質ステロイド療法と免疫吸着療法を施行した. 血清補体価, 抗DNA抗体価はともに改善傾向がみられたが1994年12月外泊後に肺炎, 出血性脳梗塞を併発し17日後に死亡した. 剖検によって中大脳動脈のアスペルギルス塞栓による出血性脳梗塞を認めた. 一般的にSLE症例では脳血管障害の合併は少ないが, その中では閉塞性脳血管障害が約半数以上を占めている. 本症例のようにSLEに合併した中枢神経系アスペルギルス症の報告は特に少ないと思われたので, 文献的考察を加えて検討した.

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