Journal of UOEH
Online ISSN : 2187-2864
Print ISSN : 0387-821X
ISSN-L : 0387-821X
胎児型後交通動脈から生じた真性後交通動脈瘤破裂症例に対する外科的治療
中野 良昭齋藤 健山本 淳考高橋 麻由秋葉 大輔北川 雄大宮岡 亮植田 邦裕黒川 暢西澤 茂
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 33 巻 4 号 p. 303-312

詳細
抄録
後交通動脈自体から生じる真性脳動脈瘤は少ないことが知られている. 特徴を有する真性後交通動脈瘤の破裂を生じた2症例を文献的な考察を加え報告する. 43歳男性, 胎児型後交通動脈から生じた真性後交通動脈瘤破裂によるくも膜下出血を生じ, 脳動脈瘤クリピング術を施行した. 手術では, 脳動脈瘤が側頭葉に埋没していたため, 脳動脈瘤を露出させるには脳の牽引が必要であった. 脳の牽引を行った際に, 脳動脈瘤の術中破裂を生じたため, 仮のクリッピングを行い, 出血をコントロールし完全な脳動脈瘤クリッピングを行った. 71歳女性, 意識障害が出現し, 同様にくも膜下出血を生じ, 脳動脈瘤クリッピング術を施行した. 脳動脈瘤の発生, 増大, 破裂には血行力学的な要因が関与すると考えられており, 特に真性後交通動脈瘤の発生には重要な要因となる. 文献によると, 真性後交通動脈瘤は胎児型後交通動脈からの発生が81.8%とほとんどであった. つまり, 胎児型後交通動脈による血行力学的な要因が脳動脈瘤の発生に強く関与していると考えられる. また, 解剖学的な位置より脳動脈瘤は側頭葉内に埋没していることが多く, 脳動脈瘤クリッピング術の際には脳の牽引が必要となり, 術中に脳動脈瘤の破裂を生じる危険性が高くなる. 真性後交通動脈瘤を手術する際には, 牽引時の術中破裂を特に注意し, 出血をコントロールする対応策を備えておくべきである.
著者関連情報
© 2011 産業医科大学
前の記事 次の記事
feedback
Top