日本透析医学会雑誌
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Tidal peritoneal dialysisにより難治性腹水をコントロールし得た末期腎不全の1例
室 かおり山縣 邦弘富田 知栄
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キーワード: 難治性腹水, 慢性腎不全
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1996 年 29 巻 4 号 p. 309-314

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抄録

糖尿病性腎症による末期腎不全で, 難治性の腹水を呈した症例を経験したので報告する. 症例は63歳の男性で, 糖尿病性腎症による慢性腎不全のために外来治療中であった. 食欲不振, 全身倦怠感, 浮腫が出現し, 徐々に進行, 同時に著明な腹水を呈するようになり, 利尿剤の経口投与でも改善みられないため入院となった. 腹水は蛋白濃度/血清総蛋白濃度比が0.42であり, 漏出性であった. すでに末期腎不全の状態であったため, 血液透析, extra corporeal ultrafiltration method (ECUM) などにて腹水のコントロールを試みたが, 血圧低下のため十分な除水はできなかった. 腹水濃縮再静注法も併用したが, 無効であった. このため, 腹膜透析用カテーテルを腹腔内に留置し, 自動腹膜灌流装置を用いたtidal peritoneal dialysis (TPD) を開始した. 施行12日目には最終貯留液量をゼロとして, 腹水をほぼコントロールし得た. TPD施行中は血圧低下なく, その後CAPDに移行し, 現在外来通院中である.
透析時の血圧低下のために, 従来の治療法では腹水を治療し得なかった末期腎不全の症例を経験した. このような難治性腹水を呈する患者に対し, 自動腹膜灌流装置を用いたTPDは有効な治療法であると考えられる.

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