日本透析医学会雑誌
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CAPD経過中に大腸憩室穿孔による糞便性腹膜炎を併発した3症例
三浦 靖彦中山 昌明浜口 欣一若林 良則中野 広文鈴木 理志土田 弘基川口 良人酒井 紀
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1996 年 29 巻 4 号 p. 315-319

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抄録

CAPD施行中に大腸憩室の穿孔による糞便性腹膜炎を併発した3症例を経験した. 症例1は, 32歳, 男性で, CAPD開始後16か月で腹膜炎症状で入院した. 抗生剤治療に反応せず, 入院3日目に筋性防御の出現とともに, 排液中に食物残渣を認めたため, 腸管穿孔の診断で緊急開腹術を施行した. S状結腸の憩室穿孔を認めたため, S状結腸切除を行い, 術後は血液透析に変更し, 軽快退院した. 症例2は, 73歳, 男性で, 14年間の血液透析後, CAPDに変更し, 17か月目に全身衰弱で入院した. 入院61日目に腹膜炎を併発し, CAPD排液からE. coli, K. pneumoniaeが検出されたため腸管穿孔を疑ったが, 全身状態の不良および本人, 家族の希望にて手術は行わず, 保存的に治療したが, 腹膜炎発症7日目に死亡した. 病理解剖において, S状結腸に憩室穿孔を認めた. 症例3は, 67歳, 男性で, CAPD開始から8年4か月後に腹膜炎で入院, 排液培養からE. coli, Bacteroides fragilis, Candida albicansが検出された. 入院7日目に開腹術を行い, 下行結腸の憩室穿孔を認め, 左半結腸切除および人工肛門を造設した. 術後腹腔内膿瘍を形成し, 手術2か月後に死亡した.
CAPD施行中に, 憩室穿孔による糞便性腹膜炎を合併することは非常に稀なことであるが, 診断に困難を極めると同時に, 診断の遅れは, 生命予後に重大な影響を与えるため, CAPD患者に難治性腹膜炎をみた際には考慮すべき病態と考えられた.

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