日本透析医学会雑誌
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長期透析患者における腎移植術 第40回日本透析医学会ワークショップより
冨永 芳博打田 和治幅 俊人高木 弘
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1996 年 29 巻 5 号 p. 351-358

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抄録
長期透析患者に対する腎移植に関して, 自験例にて検討した. 特に, 長期透析合併症の合併率, 腎移植後の経過に焦点をあてた. 自験例の腎移植例551例中, 10年以上の透析歴を有する症例は48例 (8.7%), うち15年以上は16例 (2.9%) に過ぎなかった. 明らかな腎性上皮小体機能亢進症は, 21例 (43.8%) で認め, 3例で移植後上皮小体摘出術が必要であった. アミロイド関節症は8例 (16.7%) で認め, 4例で手根管開放術を受けていた. 2例でACDK合併腎癌のため腎移植後に腎摘出術を施行した. 腎性上皮小体機能亢進症は腎移植後改善するが, 9例 (1.6%) で上皮小体摘出術を必要とした. 最近の4例中2例は結節性過形成の腺を有し, 2例は移植上皮小体由来の再発例で, 結節性過形成は腎移植でも改善しないことが示唆された. 一旦改善した上皮小体機能亢進症は移植腎機能の悪化に伴い急速に進行するため注意深い観察が必要と考えられた.
肩関節のMRI検査にて, アミロイド関節症を評価した. 腎移植後進展は予防できるものの, アミロイド関節症による器質的変化は腎移植にても改善が認められなかった. ACDK合併腎癌2例は腎摘出後良好な移植腎機能を有し経過良好であるが, 移植前の検査の必要性を痛感した. 長期透析合併症の腎移植後の改善には限界があるものの, 腎移植後ADL, QOLの改善は顕著で, 長期透析患者といえども積極的に腎移植を施行すべきと考える. ただし, 長期透析患者は, 長期透析合併症をはじめ多くの合併症を有している症例が多く, 術前の検査, 評価が重要であり, 透析, 移植医療側の緊密な連携が必要と考える.
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© 社団法人 日本透析医学会
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