理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-197
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生活環境支援系理学療法
山形県オリジナル介護予防体操の6カ月間の介入結果
―実施頻度の違いによる比較―
赤塚 清矢神先 秀人千葉 登佐藤 寿晃後藤 順子藤井 浩美日下部 明
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抄録
【目的】山形県では、介護予防を推進するために、県民一人ひとりの意識改革を目的とした「介護予防意識改革キャンペーン事業」を展開している.その事業の一つとして介護予防体操の開発及び普及事業がある.介護予防体操は、「いつでも、どこでも、だれでも、気軽に行えること」を基本コンセプトとし、県民が介護予防への取り組みのきっかけとなるような、広く親しまれ普及できることを目標に開発が行われた.今回、本体操の効果を判定するために約6ヶ月の介入を行い、その前後で評価を行った.その結果から若干の知見が得られたので報告する.

【方法】対象は事前に本研究の説明を行い書面により同意の得られた、日常生活が自立した軽費老人ホームの入所者および老人福祉センター利用者22名(平均年齢76.3±6.8歳)である.介入は5回/週の体操の機会を設け、自由参加にて実施した.評価は握力、上肢スピードテスト、Functional Reach Test(以下FRT)、長坐位体前屈、10m最大歩行速度、The Timed “Up and Go”test、等尺性最大膝関節伸展・屈曲トルク、肺活量の計測を行った.また重心動揺計にて総軌跡長、外周面積、側方最大振幅、前後方向最大振幅の測定を行った.体操の参加頻度により1.0回/週未満を低頻度群、2.5回/週以上を高頻度群とし、介入前後での比較を行った.統計解析はt検定を使用し、有意水準は5%とした.さらに介入終了後に体操に対する感想についてアンケート調査を行った.本研究は、山形県立保健医療大学倫理委員会の承認を受けている.

【結果】低頻度群は10名、高頻度群は12名であった.介入前後の群内比較では、高頻度群で、上肢スピードテストの値が速く(低値)なり、FRTの減少を認めた(p<0.01).低頻度群では、ステップ長の増加を示し(p<0.05)、FRTの減少を示した(p<0.05).その他の評価項目においては、介入前後で差を認めなかった.アンケート調査の結果からは、身体が動きやすくなった、気分が爽快になった、家族との会話の機会が増えたとの回答が得られた.

【考察】今回、約6ヶ月間山形県オリジナル介護予防体操を実施し、実施頻度により群分けを行い介入前後での比較を行った.その結果高頻度群で、上肢スピードテストの改善を認めた.このことは、本体操には上肢運動の要素が数多く取り入られており、特異性の原理が働いたことが考えられる.また、低頻度群でステップ長の増加を認めた.低頻度群の中に、毎日散歩を続けている活動性の高い対象者を比較的多く認めたことから、ステップ長の増加に影響したのではないかと考える.一方、両群においてFRTの減少を認めたことから、よりバランス能力を高める要素を本体操の中に含める必要がある.今後は体操の負荷量や内容の再検討を行い、普及を図る予定である.
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© 2009 日本理学療法士協会
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