日本透析医学会雑誌
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血液透析における好中球活性に及ぼす抗凝固薬の影響
樋口 千恵子小俣 百世二ツ山 和也小俣 正子佐藤 孝子佐中 孜二瓶 宏杉村 英一出村 黎子
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1996 年 29 巻 6 号 p. 1073-1079

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抄録

本研究では, polymethylmethacryrate (PMMA) 膜を用いた血液透析中における, 好中球の接着分子 (β2インテグリン) 発現や活性酸素, ミエロペルオキシダーゼの産生亢進に対する, 3種類の抗凝固薬 (非分画ヘパリン; ヘパリン, 低分子ヘパリン; LMWH, nafamostat mesilate; NM) の影響について臨床検討を行い, 以下の成績を得た.
1) ヘパリン, LMWH, NMの3群とも血液透析中のCD11bの発現は, ダイアライザー入口より出口の方が増強がみられた. 3群間の比較では, ヘパリン透析での発現が他の2群より弱い傾向を示した. 2) 好中球内H2O2の産生は, ヘパリンを使用した血液透析において増強傾向にあったが, NM, LMWHではその程度は軽度であった. 3) 血中ミエロペルオキシダーゼはヘパリン, LMWHを使用した透析では透析中上昇するのに対して, NMでの透析ではほとんど変化しなかった.
以上の成績より, 抗凝固薬の種類によって透析中の白血球活性化反応は異なることが明らかになった. このような差異は, それぞれの抗凝固薬の補体活性および細胞内Ca代謝への作用の違いによって現れるものと推察された.

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