日本透析医学会雑誌
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CAPD排液中皮細胞の形態とその臨床的意義について
山本 忠司金 昌雄
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1997 年 30 巻 10 号 p. 1225-1231

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抄録

CAPD排液中に剥離してくる中皮細胞の面積を測定し, CAPD歴, 腹膜機能, 腹膜変性との関連性を検討した. 対象は当CAPDセンターの患者49名でCAPD期間は3-161か月 (平均63.9か月) である. このうち3例は硬化性被嚢性腹膜炎 (SEP), 5例は腹膜硬化症の患者である. 方法はover night貯留後の排液を採取, その中に遊離している中皮細胞を遠心塗抹染色した後, 鏡顕像をコンピュータ画像処理にて面積計算を行い, 50個を測定しその平均値をとった.
結果, 中皮細胞はその面積と形態により3群に分けることができた. 細胞の形態は正常で細胞面積が平均335.6±214.0μm2, 核/細胞質面積比 (Nc比) が平均0.66±0.36の正常細胞群, 多核または異常な核を有し大型で細胞面積が570.5±251.5μm2, Nc比0.58±0.39の核異常細胞群, そして細胞が変性腫大し細胞面積が1821.0±481.3μm2, Nc比0.06±0.02の巨細胞群である.
中皮面積とFAST-PETとの間には弱い相関を認め (r=0.495, p=0.0120), CAPD期間との間には有意の正相関を認めた (r=0.719, p<0.0001). CAPD期間に相関した中皮面積の増加は, 正常細胞および核異常細胞面積が増加することと, 異常細胞出現率が増加することが原因であることがわかった. SEP症例の中皮面積は平均1030.0±99.0μm2であり腹膜硬化症例の中皮面積は597.9±333.4μm2であった. また, SEPの症例全例と腹膜硬化症5例のうち3例に巨細胞を認めた.
以上のことより, 排液中皮細胞の面積は腹膜変性の指標として有用であり, 特に巨細胞はSEPの予防のためのCAPD中止基準の指標となりうることが示唆された.

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