日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
ペプチドグリカンによる透析液汚染とその生物学的活性
土田 健司武本 佳昭山上 征二岸本 武利丹羽 允土谷 正和
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 30 巻 6 号 p. 879-887

詳細
抄録
Silkworm larvae plasma (SLP) 法はpeptidoglycan (PG) とβ-glucan (BG) を測定できる新しい方法である. したがって, 従来までのlimulus amebocyte Iysate (LAL) 法とBGの測定法と組み合わせることで, PGの汚染状態を測定することができる. そこで, これらの方法を用いて透析液汚染を検討した. さらに, PG刺激に対するヒト末梢血単核球 (PBMC) の各種サイトカイン産生に及ぼす影響をin vitroで検討した. その際PGとしてはmuramyl dipeptide (MDP) を使用した. 透析液は9透析施設より透析供給システムの4箇所1) 逆浸透装置, 2) 多人数用透析液供給装置, 3) 多人数用コンソール末端, 4) 個人用コンソール末端の計54箇所より無菌的に採取し, LAL (C) 法, LAL (G) 法, SLP法を用いて測定した. 次に健常人, 血液透析患者各10名のPBMCを採取し, lipopolysaccaride (LPS), MDP, LPS+MDPおよび汚染透析液で刺激し, 24時間培養後interleukine-1 receptor antagonist (IL-1 Ra), interleukine-1 beta (IL-1β), tumor necrosis factor-alpha (TNF-α) をELISA法にて測定した. PGは1), 2) においては検出されなかった. しかし, 末端の透析液においては3) 4.1±6.1 (N=3, 検出率17%), 4) 3.3±4.6ng/ml (N=7, 検出率39%) と汚染が認められ, PGの単独汚染やendotoxin (ET) との混合汚染も認められた. また, PBMCのIL-1 Ra, IL-1β, TNF-αの産生は, MDPの濃度依存性に増大し, MDPおよびETが相乗的に作用して, それぞれ単独刺激の場合よりもサイトカイン産生が5-10倍有意に増幅された. 以上より, 従来からET汚染が認められていた透析液にはPGも含まれていた可能性がある. また, ETとPGは相乗作用を示しサイトカイン産生を誘導する. したがって, 透析液汚染はETだけでなく, PGに対しても十分に注意する必要がある.
著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top