抄録
WistarおよびSHRラット (雌12~26カ月齢) の乳腺に発生した線維腺腫の血管系を, 樹脂鋳型走査型電子顕微鏡法により立体的に観察した。注入剤methacrylic methylester monomerに硬化剤を加え, 左心室から全身に注入, 樹脂の硬化後NaOHに漬けて血管の鋳型を得た。腫瘍を支配する血管は外側胸動脈と浅腹壁動脈で, 腋窩部および前胸部に発生した腫瘍は主に前者により, 鼠径部に発生した腫瘍は主に後者により支配されていた。これらの血管は腫瘍侵入直前の部位が太く直線的であった。腫瘍内の血管分布には規則性がなく, 腫瘍表層に血管が多く認められた。腫瘍内毛細血管のうち, 細い血管 (5~12μm) は主に線維部に, 太い洞様血管 (40~50μm) は主に腺組織周囲に分布していた。正常血管分枝部にはintraarterial cushionが存在して末梢の血流を調節しているが, 腫瘍血管にはこの装置が存在しないことが示された。