日本透析医学会雑誌
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硬化性被嚢性腹膜炎 (sclerosing encapsulating peritonitis, SEP) 診断・治療指針 (案)
1996年における改訂
野本 保夫川口 良人酒井 信治平野 宏久保 仁大平 整爾本間 寿美子山縣 邦弘三浦 靖彦木村 靖夫栗山 哲原 茂子浜田 千江子佐中 孜中尾 俊之本田 雅敬熊野 和雄横田 眞二須賀 孝夫森 典子下村 旭金 昌雄今田 聰雄田中 良治川西 秀樹枝国 節雄福井 博義黒川 清
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1997 年 30 巻 7 号 p. 1013-1022

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抄録

硬化性被嚢性腹膜炎 (sclerosing encapsulating peritonitis, SEP) はCAPD療法における最も重篤な合併症の1つである. 厚生省長期慢性疾患総合研究事業慢性腎不全研究班における 『CAPD療法の評価と適応に関する研究班』 ではこの病態に焦点をあて, その診断・治療に関する方向性を明らかにすることを目的に検討をかさねてきている. 今回, 昨年度策定した 「硬化性被嚢性腹膜炎 (sclerosing encapsulating peritonitis, SEP) 診断・治療指針 (案)」 を1年間の経験を踏まえ検討し, その問題点を明らかにし改訂案を作成した. SEPの定義についても 「瀰漫性に肥厚した腹膜の広範な癒着により, 持続的, 間欠的あるいは反復性にイレウス症状を呈する症候群である. これはあくまでも臨床的診断である」 とより実際に即したものに改訂した. 形態学的には腹膜肥厚および, もしくは硬化性腹膜炎 (peritoneal thickening and/or sclerosing peritonitis) を認める. 臨床症状としてイレウス症状 (嘔気, 嘔吐, 腹痛) が必発である. その他参考となる症状として, 低栄養, るいそう, 下痢, 便秘, 微熱, 血性排液, 限局もしくは瀰漫性の腹水貯留, 腸管ぜん動音低下がみられる. また, 腹部に塊状物を触知する. 画像診断も補助診断として有用である. 治療の基本方針はCAPDは中止し, 腸管の安静を保つことにある. 栄養補給は経静脈的高カロリー輸液 (IVH) を主体に行う. 一部にステロイド・パルス療法がSEP発症直後の症例に著効を示した症例も経験された. しかしながら本病態の多様性, 治療に対する反応性の相違から画一的に治療方針の決定には至らなかった. 従ってあくまで基本的治療方針の提示となった. また, SEP予防のためのCAPD中止基準も併せて提示した. 今後さらに症例の集積によりさらなる修正を重ね, より有用性の高い指針の策定を期待する.

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