日本透析医学会雑誌
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維持透析患者に発生した化膿性脊椎炎の2症例
藪田 又弘鎌田 勝三郎山本 雄太松村 典彦下村 英明野中 秀郎小松 正佳山本 広光
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1998 年 31 巻 1 号 p. 63-67

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抄録

維持透析患者での血行性感染を適切に対処することは, 透析患者の予後を向上させるのに重要である. 今回著者らは, 比較的稀な疾患とされる化膿性脊椎炎を合併した2例の維持透析患者を経験したが, いずれもブラッドアクセスを介しての血行感染が推察されたので報告する.
第1例は, 62歳の男性. 慢性糸球体腎炎による慢性腎不全で1986年血液透析に導入された. 1994年3月シャント穿刺部に感染が認められたが, 抗生物質の投与で治癒している. 同年5月に腰痛と発熱で入院したが, 抗生物質の投与によっても症状が消失せず, 同年11月化膿性脊椎炎の診断で手術 (病巣掻破・後方固定術) を施行した. 病巣部よりStaphylococcus epidermidisが検出された.
第2例は, 67歳の男性. 慢性糸球体腎炎による慢性腎不全で1994年11月ダブルルーメンカテーテルで血液透析を導入した. 1か月後から発熱が認められ, 血液培養でMRSAが検出された. 抗生物質の投与によってMRSAは陰性化したが, 発熱と炎症所見が持続していた. 1995年4月頃から腰痛が出現, 同年6月に化膿性脊椎炎の診断で施行された生検標本からMRSAが検出された. 症状は, vancomycinの3か月間投与により改善した.

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© 社団法人 日本透析医学会
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