抄録
症例は75歳の男性. 1997年1月19日に下腿浮腫, 肉眼的血尿に気付き他院を受診した. 施行した諸検査でBUN 85mg/dl, Cr 4.8mg/dl, Hb 9.7g/dl, 尿蛋白1+, 尿潜血3+が認められたため, 急速進行性糸球体腎炎 (RPGN) と診断され1月22日に当科に転医入院した. 入院時検査でMPO-ANCAが488 EUと高値を示し, その後に行った腎針生検で糸球体に半月体形成はなかったが, 小・中血管の血管炎所見とフィブリノイド変性が高度に観察されたため, MPO-ANCA関連の古典的多発動脈炎と診断した. 血液透析療法, ステロイドパルス療法, 二重膜濾過法 (DFPP) を施行した. その結果, 入院後13日目に血液透析から離脱できた. 治療中にMPO-ANCAとCRPが再上昇し, この時期に右腸腰筋出血を合併した. MPO-ANCA陽性の古典的多発動脈炎に右腸腰筋出血を合併した報告は少ないため, 文献的考察を加えて報告する.