日本透析医学会雑誌
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Crow-Fukase症候群の難治性胸腹水に対するCAPDシステムを利用した腹水濾過濃縮再静注療法の試み
川本 進也東 吉志佐藤 順一岩永 伸也石井 健夫増岡 秀一渡辺 修一木村 靖夫小林 正之川口 良人細谷 龍男
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1998 年 31 巻 11 号 p. 1387-1391

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抄録
今回, 我々はCrow-Fukase症候群 (CFS) の難治性胸腹水, 浮腫に対し腹水濾過濃縮再静注療法が奏功した1例を経験したので報告する.
症例: 71歳男性. 主訴: 胸腹水, 浮腫, 腎機能障害. 現病歴: 1989年に色素沈着, 浮腫, 女性化乳房, 多発性神経炎を認めCrow-Fukase症候群と診断. 96年10月より下肢の浮腫, 胸腹水の増加による呼吸困難, 腹部膨満感, 腎機能障害の進行を認め12月車椅子で入院. 入院時現症: 全身に茶褐色の色素沈着, 皮膚硬化, 浮腫, 女性化乳房, 左下肺で呼吸音減弱, 腹部膨満, 四肢の深部腱反射消失, 振動覚低下を認めた. 検査所見では貧血, 低蛋白血症, 腎機能低下, 内分泌異常を認めた. 画像上胸腹水, 心嚢水を認めたがM蛋白は認めず, 血液, 尿の免疫電気泳動でも異常は認めず骨髄は軽度の低形成のみで形質細胞の増生は認めず. 入院後経過: 薬物療法では胸腹水は難治性であり, 対症的に腹水を穿刺排液した. 低蛋白血症の進行のため, 腹水濾過濃縮再静注療法を併用した. 外来通院可能とするためテンコフカテーテル挿入し, CAPDシステムを使用し簡単に腹水採取でき, それを濾過濃縮再静注することで腹水コントロール可能となり退院. 同療法開始後次第に胸水, 心嚢水もコントロールされ約10日間隔で車椅子で外来通院中. 本治療法は対症療法ではあるものの安全にしかも容易に行えることから今後このような症例に式みられる-治療法であると考えられた.
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