維持血液透析患者50例の大動脈石灰化係数 (ACI) を1991年から1995年までの4年間測定し, その経時的変化とCa・Pi代謝関連因子, ankle pressure index (API) および心電図上のST-T変化との関係を比較検討した.
その結果, 1) ACIは1991年平均10.3±12.4, 1993年平均15.8±15.2, 1995年平均24.8±19.8と漸次有意に上昇した (p<0.0001). 2) 対象症例50例を血中HS-PTH濃度によってHypo.: 20ng/m
l未満, Normo.: 20以上40ng/m
l未満, Hyper.: 40ng/m
l以上の3群に分け, 3群間で
ΔACI ('93-'95) を比較した. Hypo. (25例), Normo. (9例), Hyper. (16例) 各群のACI ('93) に有意差は認めず,
ΔACI ('93-'95) は, それぞれ4.9±3.7, 2.5±2.1, 2.9±2.1で, Hypo. 群が他の2群に比較して有意に高い値を示した (p<0.05). 3) 対象症例50例中, 1995年にAPIを測定し得た29例のAPIは平均0.96±0.09で,
ΔACI ('91-'95) と有意な負の相関 (r=-0.456 (p<0.05)) を認めた. 4) 対象症例50例中, 4年間の観察期間中に定期的に心電図を施行し得た45例を, 新たな心電図上のST-T変化を認めた群13例と認めなかった群32例に分けた.
ΔACI ('91-'95) は3.9±2.3, 2.9±2.7と, 有意ではないが, 前者の方が高い値を示した.
以上より透析患者の動脈硬化をACIを用いて定量化し, その経時的変化とCa・Pi代謝関連因子を比較検討することによって, 副甲状腺機能低下症は動脈硬化の進展と関連ある可能性が示唆された.
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