日本透析医学会雑誌
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維持透析中にシャント閉塞を認めたC1 inhibitor欠損症2症例の検討
関 正人小島 弘之栃原 敏彦大井 洋之
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1998 年 31 巻 2 号 p. 125-130

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抄録

慢性維持透析を受けているC1 inhibitor (C1 INH) 欠損症2症例で, 良好なシャントにもかかわらず頻回にシャント閉塞が発生した. 一例は遺伝性血管性浮腫でループス腎炎を合併して維持透析となっている. 他の一例は糖尿病性腎症から腎不全となり維持透析を受けていたが, 精査の結果, 後天性のC1 INH欠損症と診断された. 2症例とも血管性浮腫の発作とともにシャント閉塞を計5回起こした. C1 INHは補体C1のみならず凝固系のXII因子, プラスミン, カリクレイン-キニン系にも作用を及ぼすことより, これら2症例の補体系の検討とともに, 凝固線溶系, カリクレイン-キニン系への影響を調べた. また, 血栓症の既往がなく, 良好なシャントを持つ慢性維持透析患者29名の凝固, 線溶系も検討した. 維持透析患者の透析前の凝固線溶系はほぼ正常と考えられた. シャント閉塞時のthrombin-antithrombin III complex (TAT), bradykinin値は高値であった. 一例ではシャント閉塞には至らない発作時にもこれらの高値が確認された.
一般に, 血管性浮腫症例で血栓症が多く起こることは報告されていないが, シャントという非生理的な血行動態下では, 発作時に凝固線溶系, カリクレイン-キニン系の異常によりシャント閉塞が起こることが考えられた.

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