入院生活を余儀なくされている血液透析患者の副甲状腺機能低下症の実態について検討した. 対象は協立十全病院において入院血液透析中の副甲状腺摘除術を受けていない45例で, 男20例, 女25例, 平均年齢70±10歳 (45-85), 平均透析期間40±44か月 (2-225), 平均入院透析期間17±15か月 (1-52) であり, 一日の50%以上臥床している症例は20例である. アレグロインタクトPTH (i-PTH) の値により分類すると, 60pg/m
l未満の絶対的副甲状腺機能低下症 (A-Hypo) が32例, 60以上160pg/m
l未満の相対的機能低下症 (R-Hypo) が12例, 160以上360pg/m
l未満の正常 (Norm) が1例で, 44例97.8%が副甲状腺機能低下症であった. 基礎疾患別のi-PTH値は糖尿病患者で最も低く, 以下慢性糸球体腎炎, 腎硬化症の順であったが, 有意差はなかった. A-HypoとR-Hypo間では, 年齢, 性比, 基礎疾患, 透析期間には有意差は認めなかったが, A-Hypoでは血清Ca値は有意に高値, 血清Al値とALP値は有意に低値であった. また, DXA法による全身骨骨塩量, ビタミンDおよび炭酸Caの投与量には有意差はなかった. 骨代謝マーカーでは総じて, Hypo例で低値を示し, さらにA-HypoはR-Hypoよりも低値を示したが, ALP以外は有意差はなかった. 患者背景因子の検討では, performance status (PS) が悪い症例では, p=0.039の有意水準をもち, A-Hypoの発生に関連があるという結果であった. PSの悪い症例は不動性であり, これが, 高Ca血症の原因となり, PTH分泌を抑制するためA-Hypoの発生を惹起しているものと考えられた.
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