日本透析医学会雑誌
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維持透析患者におけるクリオグロブリン血症とC型肝炎ウイルス感染との関係について
大竹 喜雄林 春幸横関 一雄鹿島 孝入江 康文佐久間 光史横須賀 収奥田 邦雄
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1998 年 31 巻 2 号 p. 119-124

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抄録
混合型 (Mixed type) クリオグロブリン血症 (クリオと略) がC型肝炎ウイルス (HCV) 感染と密接に関係していることが最近明らかになった. また維持透析患者中のHCV感染率が極めて高いことはよく知られている. そこで我々は透析患者中のクリオの頻度, C型肝炎感染との関係ならびに臨床意義について検討した.
三愛記念病院で1997年4月現在透析中の患者531名の血清についてクリオを調べ, 対照として千葉大学第1内科の外来で経過観察中の慢性C型肝炎患者242名, および健康成人183名について血清のクリオを調べた. その結果, HCV感染の慢性透析患者170名中30.6%, 慢性C型肝炎患者中29.8%, HCV感染のない透析患者中10.8%, および健康成人中0%にクリオが証明された. 過去6か月以内に透析に入った腎不全患者30名中4名がHCV抗体陽性, 中1名がクリオ陽性, 26名はHCV抗体陰性, 中4名 (15%) がクリオ陽性であった. クリオ陽性患者は陰性患者にくらべて平均午齢は若かった. なお生成するクリオ沈澱量は透析患者では対照にくらべ, また他の報告の量より遥かに低かった. 輸血歴, 透析期間とクリオとの間には相関は無かった. クリオ陽性患者には皮膚のかゆみの訴えが多かった. HCV抗体陽性患者につき肝機能, HCVウイルス量を検討したが, クリオ陽性患者と陰性患者間に差は無かった. 維持透析患者は非透析患者にくらべHCV感染に起因するクリオ発現率は低く, クリオの生成能は低く, クリオに起因する臨床症状は著しくなく, クリオが肝疾患を悪化させるという所見は得られなかった. 透析患者の中のかなりの数の者は透析前よりクリオをもっており, またクリオを有する患者は若い年齢で透析に入るように思われる.
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