日本透析医学会雑誌
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新しい透析用人工血管 (HDS®) の早期使用経験
平中 俊行金 昌雄
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1998 年 31 巻 4 号 p. 285-288

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抄録
1996年1月から1997年3月の間に, 血液透析用内シャントとしてHDS®グラフトを47症例に49本移植し, 早期使用を行った結果につき臨床的検討を行った. 性別は男25例, 女24例, 年齢は平均59.3歳, 透析歴は平均3.7年, ブラッドアクセス手術回数は平均2.4回であった. 原疾患は糖尿病21例 (42.9%), 慢性糸球体腎炎11例 (22.4%), その他17例 (34.7%) であった. 人工血管移植部位は, 上腕近位42件, 前腕3件, 上腕遠位3件, 上腕動脈-腋窩静脈1件であった. 人工血管の穿刺までの期間は, 術後1日から37日, 平均8.5日であり, 46.5%の症例は術後1週間以内に使用した. 早期穿刺に伴う合併症は, 1例に出血による血腫を認めたのみであった. 止血時間は全例15分以内であり, 従来のePTFEグラフトより短時間であった. 経過観察中の合併症は血栓閉塞が9件で最も多く, 感染2件, 血清腫1件, 人工血管露出1件であった. 経過観察期間に5例の死亡症例を認めたが, 人工血管に関連した死亡はなかった. 救済処置を行わなかった一次開存率は, 6か月85%, 12か月77%であり, 救済処置を必要とした二次開存率は, 6か月87%, 12か月83%であった. 従来のePTFEグラフトと比較して, HDS®グラフトの開存率は有意に良好であった. HDS®グラフトは早期使用が可能であり, 開存性にも問題はないことから, 血液透析用グラフトとして優れていると思われるが, 今後さらに長期にわたる追跡調査が必要と考えられる.
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