日本透析医学会雑誌
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早期胃癌の術後, 急性腎不全で発見された多発性骨髄腫の1例
黄 泰奉池田 裕次冨吉 義幸宮園 素明酒見 隆信
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1998 年 31 巻 4 号 p. 299-302

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抄録
症例は59歳, 女性. 1991年11月8日早期胃癌で胃全摘術を受け, 術後3日目より嘔気・嘔吐および発熱を認めた. 炎症所見が顕著であったため抗生剤を投与したところ乏尿および高カリウム血症が出現した. 術後11日目には血清Cr 8mg/dlと腎機能は急激に悪化し血液透析を開始した. その後, 免疫電気泳動にて尿中Bence-Jones (BJ蛋白), 血中モノクローナルlgAを確認し, 骨髄穿刺においても異型形質細胞を約20%認めた. 術後88日目に行われた腎生検にて尿細管円柱を多数認めたため, 多発性骨髄腫とそれに起因する腎不全と診断した. 約1か月の乏尿期の後, 次第に尿量は増加してきたが感染症を契機に全身状態が悪化し死亡した.
本症例は術前の検尿や血液検査で問題となる異常を指摘されていなかった. 術後の感染症に起因する発熱や脱水により, 尿中のBJ蛋白濃度が上昇し, それにより腎毒性を高め急性腎不全に至ったものと思われた.
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