抄録
症例は57歳男で51歳時腎生検にて膜性腎症によるネフローゼ症候群との診断を受けた. ステロイドホルモンの経口療法に反応せず腎不全が比較的急速に進行して55歳時血液透析導入を経てCAPD導入となった. 血清CK値は透析導入前すでに高値を呈していたが透析導入後一段と上昇し2,092u/lに達した. この時点でIgA-κλと結合したCK (macro CK) が確認された. 左前脛骨筋の生検を行ったが異常所見はみられなかった. この間筋痛, 発熱, 皮疹はみられず, また甲状腺機能, 各種自己抗体, 補体値, 腫瘍マーカーにも異常はみられなかったことより本例の高CK血症にはmacro CKが関与していると診断した.
腎不全の比較的急速な進行ならびに高CK血症が長期に亘っていることより本例では免疫応答異常が長期にわたっていることが推測される.