日本透析医学会雑誌
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二次性上皮小体 (副甲状腺) 機能亢進症に対する経皮的エタノール注入療法 (PEIT) の効果と問題点
北島 久視子渕之上 昌平阿岸 鉄三林 哲朗
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1999 年 32 巻 6 号 p. 1021-1027

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抄録

慢性腎不全で, 二次性上皮小体 (副甲状腺) 機能亢進症を合併している24症例に対し, 経皮的エタノール注入療法 (PEIT) を施行した. 対象は31-70歳 (平均54.4歳) までの男性10例, 女性14例で, 平均透析歴は14年7か月である. 骨変化は手指骨で最も多く17例にみられたが, 自覚症状を伴っていた症例は6例のみであった. また, PTx後の再発症例が4例含まれていた. 注入は1-4腺に対し行い (平均2.1腺), 1腺の大きさでは最大径で10-20mmのものが16例と最も多かった. 内部への血流状態により3群に分類し, intact-PTHの推移とともに注入後の効果の判定に用いた.
PEITによりintact-PTHが低下した症例は17例 (70.8%) であり, このうち前値の50%以下になった症例を14例 (58%) に認めた. 低下しはじめるまでの注入回数は最多で4回を要した. また, 自覚症状を有していた6例中5例では症状は著明に軽快したが, 1例のみさらに増悪したため摘出するに至った. 一方, 開始前よりintact-PTHが上昇した症例も2例 (8.3%) に認められ, この2例はいずれも手術により摘出した.
注入に直接起因する合併症として, 反回神経麻痺を6例 (25%) に認め, 治癒までの期間が最も長い症例では約3か月を要したが, 全例一過性であった. また, いずれも下上皮小体への注入後に発生したものであった.
PEITは, 二次性上皮小体機能亢進症で内科的治療のみでは限界となった症例や, 手術の適応外とみなされた症例などに対する治療法として, その有効性が充分期待できるものと考えられた.

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