日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
腹部大動脈瘤により左腎動脈狭窄をきたし透析導入になった症例に対し, 左腎動脈-脾動脈吻合術を施行し腎機能を回復した1例
天野 裕之唐仁原 全近藤 典子上原 徹渕之上 昌平東間 紘阿岸 鉄三
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 32 巻 6 号 p. 1029-1033

詳細
抄録

症例は72歳, 女性. 1996年2月初旬より腹部, 背部に疼痛が出現し近医を受診した. 近医にて腹部大動脈瘤を指摘され, 精査のため当院を紹介され入院した. 入院時検査ではCT上腹部大動脈瘤の径は4.5cmであり, また血清creatinine (Cr) 値7.9mg/dl, blood urea nitrogen (BUN) 値55.1mg/dlと腎不全の合併も認められた. その後顔面や四肢に浮腫が出現し, 腎機能も急激に低下してきたため3月23日血液透析を開始した. CT上右腎は萎縮していたが, 左腎の皮質は保たれていたことから透析導入後腎生検を施行した. 約半数の糸球体は残存していたことから血行再建の方針となり, 4月9日脾動脈, 左腎動脈吻合術を施行した. 術後経過は良好で, 術当日から利尿がみられ術直後より血液透析から離脱した. 血管閉塞性の急性腎不全において, 比較的早期に血行再建術を施行し, 成功した報告に関しては国内外から報告を散見するが, 透析導入後時間が経過した症例における血行再建術については, 報告例が少ない. 今回の症例より, 病理学的な診断による裏付けがあれば, 発症後比較的時間が経過した症例であっても血行再建術の適応があると考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top