日本透析医学会雑誌
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長期に残腎機能が保持されているCAPD患者の1例
笠井 健司安田 淳近藤 誠濱口 明彦小林 英之寺脇 博之平野 景太川口 良人細谷 龍男
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1999 年 32 巻 6 号 p. 1035-1040

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抄録

我々は長期に渡って良好に残腎機能が保たれ, CAPD症例としては理想的と考えられる臨床経過をとった症例を経験したので報告する. 症例は59歳男性, 8年前に原疾患不明の慢性腎不全のためCAPDに導入された. 導入直前のクレアチニンクリアランス (Ccr) が8.3ml/minと比較的保存されており, 導入後, 腎機能を増悪させると考えられる重篤な合併症を経験することがなかった. 現在, 1000ml/日以上の残存尿量が保持されているため, 良好な透析状態にあり, Ccrの51.4%, Kt/Vの39.8%が残腎機能によってまかなわれていた. CAPDは残腎機能を長期に維持できるという長所を有するが, 多くは3-4年で残存尿量が認められなくなる. 本症例は8年にわたって残腎機能が良好に保たれており, 臨床経過の詳細な検討が有用であると考えられた. 残腎機能の保持にはCAPD導入時の腎機能が比較的保たれていること, 導入後の重篤な合併症を回避することが重要であると考えられた.

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