日本透析医学会雑誌
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透析骨症の成因と病態および診断に関する研究
岡田 雅美
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1999 年 32 巻 6 号 p. 975-988

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抄録

血液透析患者46名を対象として, 骨組織形態計測を行い, 透析骨症の病型を, hyperparathyroid bone disease (HPT; n=11), mild lesion (ML; n=18), osteomalacia (OM; n=4), およびaplastic bone disease (ABD; n=13) の4型に分類し, HPTのうち, 線維組織量が0.5%以上の例はosteitis fibrosa (OF; n=8) とした.
1) 血清intact-PTH濃度と骨芽細胞面, 破骨細胞面, 骨形成速度および線維組織量は強い正の相関を示し, 回帰分析により求めた骨回転が正常のときの血清intact-PTH濃度の範囲は85-220pg/mlであった. 2) 透析患者において, PTHの分泌が正常である場合は相対的にはPTH欠乏の状態であり, 骨形成と骨回転が低下してABDが発現する. 骨梁面へのAI沈着の程度とABDの発現頻度には関連はみられず, ABDの基本的な成因は, PTHの相対的な欠乏による骨芽細胞の減少と骨形成速度の低下であると考えられる. また, ABDの発現頻度は50歳以上の患者において有意に高く, 加齢による骨芽細胞機能の低下もABDの成因の一つと考えられる. 3) OM群では, 骨梁面へのAI沈着が高度であり, 透析患者において, 骨梁面へのAI沈着は石灰化を障害して類骨幅と類骨量を著しく増加させ, OMの発症要因となる. 4) HPTでは, 著しいPTHの分泌元進 (血清intact-PTH濃度>400pg/ml) に伴って, 骨芽細胞面と破骨細胞面が増加し, 骨形成速度および石灰化速度の充進と線維組織量の増加が認められる. また, HPTでは, 類骨幅と類骨量の増加をみることがあり, 骨芽細胞による類骨の産生充進に対して石灰化が相対的に遅延しているためと考えられた. 5) 血清PTH, 骨型ALP, BGPおよびTRACPは, 骨代謝の組織学的パラメーターと正の相関を示し, 血清intact-PTH濃度が400pg/ml以上, あるいはM-PTHが30ng/ml以上のとき, 90%以上の感度および特異度でHPTあるいはOFを診断できる. また, 血清骨型ALPが正常上限以上のとき, HPT (感度100%, 特異度97%) およびOF (感度100%, 特異度89%) を診断でき, 血清TRACPが正常上限以上のとき, OFを鑑別できた (感度100%, 特異度93%). また, 血清BGPが60ng/ml以上の場合は, 全例, HPTであった (感度73%, 特異度100%).
一方, 血清intact-PTH濃度が正常上限 (65pg/ml) 以下の場合は, 感度77%, 特異度94%でABDであり, 40pg/ml未満では, 全例ABDであった. また, 血清intact-PTHが65-400pg/ml, あるいはM-PTHが6-30ng/mlの範囲内のとき, 約70%の症例がMLであったが (感度89%, 特異度75-79%), OMとMLを区別することは困難であった.

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