日本透析医学会雑誌
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CAPD脱落症例の検討
腹膜炎, 腹膜の組織学的所見を中心に
田中 一誠前田 貴司香川 直樹小川 貴彦岡本 有三平田 雄三善家 由香里山崎 浩之時田 大輔井手 健太郎藤高 嗣生田中 恒夫福田 康彦福原 敏行
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1999 年 32 巻 7 号 p. 1059-1064

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抄録

当センターでこの12年間に経験したpositive selectionのCAPD症例59例中, 死亡15例, 血液透析 (HD) への移行23例の計38例 (64.4%) が, CAPD脱落症例であった.
これらの脱落原因の50%がCAPDに関連したもので, 中でもHD移行の主な理由は, 限外濾過不全, 難治性・頻回のCAPD腹膜炎, 硬化性被嚢性腹膜炎 (SEP) であった. また, 開腹手術を要した6例中5例がHDへ移行した. 脱落関連因子として, CAPD施行期間の長さ, CAPD腹膜炎罹患が有意に相関があると考えられた.
SEP症例は, 59例中3例, 5.1%であった. 限外濾過不全のためHD移行後, この前段階と考えられる著明な腹水貯留4症例に, 発症早期からのステロイド治療が有効であった.
CAPD排液中のamylase値は, 平常時およびCAPD腹膜炎時には, それぞれ, 5.6±2.7, 19.3±22.6mU/mlで, 後者で有意に高値を呈した. 穿孔性腹膜炎2例 (S状結腸, 回腸) と急性膵炎1例に緊急開腹手術を施行したが, 術前のこれらの値はさらに著明な高値を示し, 一般のCAPD腹膜炎との鑑別に極めて有用であった. 回腸穿孔例では, 術後に縫合不全を合併し手術死亡となったが, このような後期の腹膜硬化症を呈する症例においては, 腸管吻合に重大な危険性が存在すると考えられた.
脱落症例38例中16例に, カテーテル抜去時や開腹手術時に腹膜のサンプリングが行われ, 病理組織学的検索がなされた. CAPD施行期間が8-18か月の3例では, いずれも腹膜線維症の所見であった. しかし, 60か月以上の13例中12例, 92.3%では, 腹膜機能障害が非可逆性といわれる中期以後の腹膜硬化症の所見 (中期5例, 後期7例) が認められ, 極めて注目すべき結果が得られた. この事実は, かかる長期CAPD症例においては, SEPとの関連から, その中止時期も含めて, 注意深い経過観察が必要であると考えられた.

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