日本透析医学会雑誌
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除水による蛋白濃縮度の意義の検討
田部井 薫黒田 豊高野 隆一増永 義則井上 真赤井 洋一浅野 泰
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1999 年 32 巻 7 号 p. 1071-1077

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抄録

透析中の除水により血圧が低下することがあるが, これは循環血液量の減少によるといわれている. しかし, 臨床的には簡便に循環血液量の変化を知る方法はない. 今回我々は血清総蛋白濃度 (TP) を透析前後で測定し, その濃度変化から循環血漿量 (CPV; circulating plasma volume) の変化を推定してドライウェイトの設定に役立つか否かを検討した.
透析中に循環血中の蛋白総量が変化しないとするならば, CPVB×TPB=CPVA×TPAが成立する. ここでBとAは透析前と後を表す. したがって, 総蛋白濃度変化 (TPB/TPA) は循環血漿量の変化 (CPVA/CPVB) を表す. 61例の安定維持透析患者で, 12-24か月にわたり透析前後の総蛋白濃度とその他のパラメーターを比較した.
循環血漿量の変化 (%ΔCPV) は体重変化率 (%ΔBW) と正の一次相関を示した (y=3.54x-0.16, r=0.63, p<0.0001, n=992). そこで, %ΔCPV/%ΔBW (PWI; plasma body weight index) を指標として, 5群に分けて検討した. I群PWI<0, II群PWI0-2, III群PWI2-4, IV群PWI4-6, V群PWI>6. 心胸郭比 (CTR) はI, IIで有意に大きく, 透析による血圧低下はIV, V群で有意に大きかった. 各個人のPWIとCTRとの関係をみると, 観察期間中にCTRの変化が5%以下の症例ではPWIとCTRに相関はないが, 8%以上の変動のあった症例では19例中15例で負の有意な相関を示した. つまり, CTRの増加に伴いPWIは減少した.
以上のことから, 透析前後の総蛋白濃度を測定することは有用で, 循環血漿量の変化を知ることができる. その結果, 1%の体重変化は循環血漿量を平均3.5%減少させた. 循環血漿量変化率/体重変化率で定義されるPWIはドライウェイト設定の指標の一つとなりうると思われた.

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