抄録
慢性透析患者に合併した胸部および腹部大動脈瘤の3症例を経験した. 症例1は48歳, 男性で主訴は腹痛と背部痛, 腹部CTで最大径10cmの解離性大動脈瘤 (DeBakey IIIb) を認め, 腎下部腹部人工血管置換術および胸腹部置換術を施行した. 術後に後腹膜膿瘍を認め, 敗血症のため術後3か月目に死亡した. 症例2は62歳, 男性で主訴は腹痛, 嘔吐. 腹部CTおよび腹部超音波検査で最大径5cmの腹部大動脈瘤を認め, 腹部人工血管置換術を施行した. 術後経過良好であったが, 術後40日目に脳内出血を併発し死亡した. 症例3は81歳, 男性で主訴は腹部腫瘤. 腹部CTで最大径5cmの腹部大動脈瘤を認めたが, 高齢であり保存的療法で経過観察を行い現在も健在である. 透析患者に合併した大動脈瘤に対しては破裂例の予後が悪いことから, 早期発見と積極的な外科療法の必要性が強調されている. しかし, 依然リスクの高い手術であり周術期管理には十分な注意が必要であると考えられる.