抄録
我々は末期腎不全にて発見された, 非癒合性交叉性骨盤腎の1例を経験した. 症例は36歳男性で, 昭和61年頃から腹満感, 平成6年頃から膝関節痛および夜間頻尿を自覚し, また平成7年4月頃に高血圧を指摘されたが, 定期的外来受診を受けておらず, 今回尿路感染症による発熱を呈し当院初診となった.
入院時, 血清クレアチニンと尿素窒素の上昇, 代謝性アシドーシス, 高度の腎性貧血を呈し, 尿毒症に対して緊急血液透析が施行された. 他覚的に高度の腹部膨瘤が認められたため, 腹部CT scan・MRI等を施行し, 多嚢胞性腎形成異常と水腎症との鑑別を要したが, 最終的に, 両側水腎症と診断した. その原因検索の結果, 先天性の非癒合性交叉性骨盤腎による両側水腎症と診断し, 左腎単純全摘による右腎機能の温存を試みたが, 腎機能の改善が認められず, 血液維持透析導入となった.
一般にこのような腎奇形はそう稀ではないが, 初診時より末期腎不全にて発見され, そのまま透析導入までに至る症例報告はなく, ここに報告した.