日本透析医学会雑誌
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血液透析患者に発生した尿路上皮癌の1例
野村 威雄佐藤 文憲酒本 貞昭
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1999 年 32 巻 8 号 p. 1159-1162

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抄録

症例は55歳男性. 主訴は肉眼的血尿. 1991年糖尿病性腎症のため血液透析導入され, 週3回の維持透析が施行されていた. 1995年11月27日肉眼的血尿出現し当院入院, 膀胱鏡検査で乳頭状腫瘍を認め同12月19日経尿道的膀胱腫瘍切除術 (TUR-Bt) を施行した. 病理組織診断はTCC, G3, pTaであった. 以後経過観察していたが, 1996年8月肉眼的血尿, 尿細胞診class Vのため再度膀胱鏡検査施行したところ多発性膀胱腫瘍再発を認めたため, 同9月4日全身状態を考慮し, 単純性膀胱摘除術を施行した. 病理組織診断はTCC, G 2, pT 2であった. 2か月後, 症候性右水腎症を発症し, 同11月27日右腎摘除術を施行した. 病理組織診断にて腎孟, 尿管断端にTCC, CISを認めたため1997年1月22日残遺尿管摘除術を施行した.
さらに同6月, 左膿腎症を発症したため, 左腎摘除術を試みたが高度癒着のため摘出できず, 腎瘻術のみに止めた. 同時に採取した腎盂尿細胞診はclass Vであった. その後全身状態は徐々に悪化し1998年2月11日死亡した. 本症例は血液透析患者に合併した多発性尿路上皮癌と考えられ, 診断および治療に難渋した症例であった.

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