日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
前立腺癌に対する放射線治療が奏効した血液透析患者の1例
酒井 善之
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 35 巻 6 号 p. 1131-1134

詳細
抄録

患者は71歳の男性. 1996年1月血液透析に導入. 1997年3月肉眼的血尿が出現し, PSAが37.2ng/mLと異常高値であった. 病理組織診断は前立腺の高分化腺癌で, 臨床病期はT2aと診断した. 8か月間の内分泌治療の後に, 前立腺に放射線治療を行った. 総線量70Gyを, 35回に分割し, 58日間かけて, 120度外側回転振子照射で行った. 1999年4月から, 歩行時に両側鼠径部の痛みを訴えるようになった. 2000年6月に両側の陳旧性大腿骨頸部骨折と診断された. PSA値は1998年5月以降0.5ng/mL以下を維持している. 血液透析患者の場合, 根治的前立腺全摘除術では大量出血は避けられない. 内分泌治療で前立腺癌を治癒させることは困難である. 放射線治療は, ステージT1やT2などの早期の前立腺癌に罹患した血液透析患者には最も適した治療法と考えられる.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top