抄録
二次性副甲状腺機能亢進症は長期透析患者の重大な合併症の一つであり, その治療法として選択的副甲状腺エタノール注入療法 (PEIT) は近年急速に広まりつつある. PEITの治療ガイドラインは深川らにより確立され, その有効性については多くの報告があるが, PEIT後の後療法についてのプロトコールは未だ確立されていない. 近年, 静注ビタミンD誘導体maxacalcitolが開発され, 二次性副甲状腺機能亢進症に対する効果が期待されているが, PEIT後の後療法としての有用性について検討した報告は少ない.
今回, 私たちは二次性副甲状腺機能亢進症に対しPEITを施行した後の後療法としてmaxacalcitol静注パルス療法を施行し, 副甲状腺ホルモン, 骨代謝マーカー, 副甲状腺体積, 骨密度に対する効果について検討した.
維持透析施行中でintact-parathyroid hormone (i-PTH) 400pg/mL以上の症例で, 頸部超音波にて1腺もしくは2腺の副甲状腺腫大および副甲状腺内血流を確認でき, PEITについてのインフォームドコンセントが得られた計5例 (男性4例, 女性1例, 平均年齢44.4±12.1歳, 平均透析期間11.6±2.1年) を対象とし, PEIT後の後療法として初回PEIT後翌週よりmaxacalcitol静注パルス療法 (maxacalcitol 5μg/日×週3回) を施行した. 初回PEIT前, PEIT後6か月, 12か月後のi-PTH, 血清Ca, Pi値, Alp, intact-osteocalcin (i-OC), 骨密度, 副甲状腺体積を測定し, その改善度について検討した. その結果, i-PTH, Alp, i-OC, 副甲状腺体積のすべてにおいて初回PEIT前と比較してPEIT後6か月, 12か月後では有意な低下, 縮小を認めた. 今回の結果より, maxacalcitol静注パルス療法はPEIT後の後療法として有用であると考えられた.