日本透析医学会雑誌
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腎移植を見合わせた症例の検討
原田 浩新藤 純理竹内 一郎渡井 至彦櫻井 哲男上田 峻弘平野 哲夫
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2003 年 36 巻 1 号 p. 55-60

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抄録

【目的】 本邦においては慢性腎不全患者にとって腎移植はいまだに貴重な手術であり, 予定していた手術が中止となった場合の落胆は計り知れない. ここでは腎移植手術を予定し入院したにもかかわらず, 諸理由により延期, 中止を余儀なくされた症例を検討し, 中止原因を追及することを目的とした. 【対象】 1985年の当科開設以降, 諸理由により予定した腎移植を見合わせた18症例 (15例18機会) である. 【検討項目】 これらにつきi) 患者背景, ii) 見合わせた理由 (レシピエント側要因, ドナー側要因, 両者のmatchingによる要因), iii) 転帰を検討した. 【結果】 i) 生体移植予定17例, 献腎移植予定1例. レシピエント年齢; 16-56歳, レシピエント性別; 男性8, 女性10例. 透析期間; 13-108か月. ドナー年齢; 46-78歳, ドナー性別; 男性7, 女性11例. ii) レシピエント側要因: 極度の不安1, 冠動脈硬化1, 脳梗塞1, 異所性カルシウム沈着による心筋障害1, 透析不足によるうつ状態1, 上肢の蜂窩織炎1, 壊死性リンパ節炎1, 肝腫瘍1, 巨大子宮筋腫1例の計9例. ドナー側要因: 内頸動脈狭窄1, 松果体腫瘍1, 腎癌1, HCV感染1, 敗血症1, 逡巡1, 副腎腫瘍 (無症候性pre-Cushing症候群) 1例の7例. 両者matching による要因: 血液不適合症例における抗A抗体価高値1例, 抗B抗体価高値1例. iii) レシピエント側要因により中止となった9例のうち2例はのちに他施設で移植施行, 抗A抗体価高値であった1例も他院で移植を施行されたが, 他は未施行である. 【結語】 慢性腎不全, あるいは血液浄化による合併症の予防, 早期発見, 治療が肝要であり, またドナーの厳重な精査も可能な限りドナー決定の際に行うべきと思われた. またABO血液型不適合の場合, 血液浄化法を駆使し計画的に速やかな抗A・B抗体価の低下措置が必要と考えられた.

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