抄録
体重増加量の多い患者に対し, 除水による血圧低下防止を目的として高ナトリウム (Na) 透析 (設定透析液Na濃度152meq/L) を施行していた. 透析後血清Na濃度は, Naイオン電極直接法による測定値では透析液Na濃度程度まで上昇していたが, 間接法による測定値は上昇せず, むしろ透析前値よりも低下することさえあった. その原因を確認する目的で, 当院で管理している外来透析患者40名を対象とし, 2000年1月から12月までの1年間, 両測定法による透析前後のNa値と透析除水量, 血清総蛋白濃度などの関連についてレトロスペクティブに調査検討した. 1年間の直接法と間接法によるNa測定値の乖離程度と除水による血清蛋白濃度の上昇との間には有意の正の相関関係が認められた (n=468) (r=0.404, p<0.001). 間接法の測定値が直接法よりも低いのは溶媒置換 (マトリックス異常) によるもので, 透析の除水による血清蛋白濃度の上昇が寄与していることが示唆された. 溶媒置換があると, Na測定値は見掛け上低い測定値となる. 高Na透析施行による血清Na濃度の変化を把握する場合, 間接法よりも溶媒置換の影響がない直接法による測定値の方が適切に表現されると思われた.