日本透析医学会雑誌
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ロサルタンによる好酸球性肺炎が疑われた1透析例
井手 紀子西本 愛藤崎 大整三根 誠池田 裕次酒見 隆信力武 修
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2003 年 36 巻 2 号 p. 141-145

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抄録

症例は69歳女性. 1996年7月に慢性血液透析導入 (原疾患は不明). 以後, 近医にて維持透析を受け, 著変なく経過していた. 2000年3月末から発熱, 食欲低下, 倦怠感が出現. 一方で呼吸器症状などは認めず, 炎症所見も認められないため, 経過観察されていたが, 定期の胸部X線写真にて, 両側の肺野に浸潤影を認めたため, 4月7日当院に入院となった. 2000年2月21日より高血圧に対しロサルタン25mg/日が新規で処方されていたことと, 以前に薬剤性肺炎の既往があること, そして末梢血・気管支洗浄液中の好酸球の増加, 胸部X線写真上両側の肺野に浸潤影の出現を認めることなどからロサルタンによる好酸球性肺炎と考え, 薬剤の中止とステロイドの投与を行った. その結果, 速やかに解熱し, 末梢血中の好酸球の減少, 胸部X写真の改善を認め, 軽快退院となった.
これまで, ロサルタンによる好酸球性肺炎の報告例はなく, 稀な発症と思われた, しかし近年本剤のようなアンジオテンシンII受容体拮抗薬は血液透析中の高血圧症患者においてもその有用性が示され, 長期投与の安全性も報告されていることから, 使用頻度の増加から本例のような症例の増加も懸念されるため報告した.

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