日本透析医学会雑誌
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慢性腎不全に合併したabdominal anginaにprostaglandin E1が有効であった3症例
杉浦 秀和小川 哲也平林 あゆみ末永 多恵子大前 清嗣西田 英一土谷 健秋葉 隆二瓶 宏
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キーワード: 虚血性腸炎, 慢性腎不全
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2004 年 37 巻 4 号 p. 329-334

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抄録
慢性腎不全に合併したabdominal anglnaの典型例に対し, prostaglandin E1 (PGE1) が有効であった3症例を経験した. Abdominal anginaは, 腹部内臓動脈の狭窄または閉塞に伴い支配領域腸管の運動亢進による間欠的な虚血症状を伴う場合に用いられる症候群である. 食後の腹痛, 体重減少, 排便習慣の変化を3主徴とし, 腸管動脈の閉塞に基づく, 広範な腸管壊死を生じ, 致死的な状況も生じうる. Abdominal anginaの原因の約50%が動脈硬化であることを考慮すると, 動脈硬化病変の罹患率が高い慢性腎不全に合併しやすい病態と考えられる. 重篤な腸管壊死の危険性に加えて, 食後や透析時の腹痛の出現は, 著しくquality of life (QOL) を損なう状況である. 治療法は一般に血行再建術であるが, さまざまな動脈硬化性病変の合併症のある慢性腎不全では, しばしば困難である. そのため, abdominal anginaの腹痛, 腸管の血流改善に, 保存的治療が望まれるが, これまで一定の見解が得られていない. 今回われわれは, 慢性腎不全患者における同疾患に対して, 血管拡張作用の認められるPGE1を用いた結果, 腹痛をコントロールするのに有効であった3症例を経験した. Abdominal anginaの保存的療法として, PGE1を試みる価値があると考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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