日本透析医学会雑誌
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高カロリー輸液に併発した高K血症性尿細管性アシドーシスの1例
多嘉 良稔河野 恒文正田 孝明
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2006 年 39 巻 1 号 p. 75-80

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抄録
患者は90歳, 女性. 慢性腎不金と脳梗塞後遺症で入院加療中. 平成10年5月21日より全身倦怠感と食思不振を訴えるようになり, 漸次飲食量が減少していった. これに伴い脱水症状も出現してきたので, 5月27日に高カロリー輸液を開始した. 5日後に急性肺炎の併発とともに突然高K血症を伴った著しい混合性アシドーシスが出現, 12日後には血清anion gap (AG) が正常の高K血症を伴う高CI性代謝性アシドーシスが出現した. この時, 血漿アルドステロン濃度 (PAC) は55.9pg/mLと正常, transtublar K+ gradient (TTKG) は1.36と低値, 尿中AGは22.4mEq/Lであった. 血清Cr値は5月26日の1.8mg/dLから6月8日には0.9mg/dLに低下した. 高K血症と高Cr性代謝性アシドーシスは, 薬物治療と腹膜灌流によりやや改善したが, 急性肺炎の増悪により18日後に死亡した.
著者らは, この病態を高K血症性尿細管性アシドーシス (高K血症性RTA) と診断した. 文献を渉猟した限りでは同様の報告は見当たらず, その発生機序は不明である. 著者らは, TPN施行中に生じた急性代謝性アシドーシスのためにアルドステロンに対する尿細管細胞の反応性が低下し, その結果高K血症性RTAが発症したと推察した.
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