日本透析医学会雑誌
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感染性腎動脈瘤に対して外科的治療が奏効した長期透析患者の1例
駒場 大峰井垣 直哉後藤 俊介横田 一樹門口 啓竹本 利行田中 真紀前田 賢吾来田 和久廣末 好昭玉田 文彦後藤 武男
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2006 年 39 巻 2 号 p. 139-144

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抄録

今回われわれは, 長期血液透析患者の不明熱の原因が感染性腎動脈瘤であった1例を経験した. 症例は47歳男性. 20年間, 近医にて維持血液透析が行われていた. 発熱と左腰背部の鈍痛が出現し, 当院紹介入院となった. 腹部CTでは左腎動脈起始部に壁在血栓を伴う約2cm大の動脈瘤を認め, 感染性腎動脈瘤が考えられた. また, 左腎下極に約3cm大の高濃度の嚢胞を認め, 長期透析に伴う多嚢胞化萎縮腎への感染も考えられた. 抗生剤投与により一時的に改善を認めたが, 左腰背部の鈍痛, 37℃台の発熱が持続し, 将来的に破裂の可能性も考えられたため, 一期的に経腹的左腎摘出術, 左腎動脈瘤切除術を施行した. 術中所見では, 動脈瘤の周囲への高度な癒着, 大動脈周囲リンパ節の腫大を認め, 動脈瘤への感染が示唆された. 左腎周囲の癒着はごく軽度であり, 感染源は左腎動脈瘤によると考えられた. 病理所見では, 軽度の炎症細胞浸潤を伴う器質化した組織像を呈した. 摘出腎の嚢胞壁からは偶然に微小な乳頭状腺癌を発見した. 本例における感染性動脈瘤の発症機序としては, 既存の外傷性動脈瘤への二次感染, あるいは, 頻回のシャント穿刺による細菌感染の血行性転移により動脈瘤が形成された可能性が考えられた. 透析患者の不明熱では, 感染性動脈瘤の可能性も考慮して対処する必要があると考えられた.

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