2006 年 39 巻 9 号 p. 1403-1408
症例は78歳女性. 25歳時腎結石で左腎臓摘出. 右腎結石で通院していたが腎機能低下し, 76歳時に血液透析導入. 2005年9月5日出血性十二指腸潰瘍で緊急入院. PPI開始後, 汎血球減少を認め, PPIを中止したがさらに悪化, 骨髄所見より骨髄異形成症候群 (MDS) と診断された. 10月5日発熱, 咳嗽および喀血を認め, 画像上びまん性に浸潤影が拡がり肺胞出血と診断. 急性呼吸不全に陥り人工呼吸器管理となった. 血管炎の合併を疑い, 診断的治療としてステロイドパルス療法 (M-PSL500mg, 3日間) を開始した (PSL維持量20-60mg). 検査所見では凝固能異常はなく, 悪性疾患, 感染症, 膠原病および血管炎は否定された. ステロイドの反応は良好であったが再燃を繰り返し, その都度ステロイドパルス療法を行い, γ-グロブリン製剤の併用や血漿交換を試みた. 経過中, サイトメガロウイルス肺炎を合併し, ガンシクロビル投与を開始した. 全身性に出血傾向を認めはじめ, 4回目のステロイドパルス療法の効果はなく病状は増悪し, 多臓器不全で11月23日永眠された. 本症例はMDSの活動性を認めた時期に肺胞出血を併発したことから, MDSに伴う一連の病態と考えられたが, その成因を解明するまでには至らなかった.