抄録
不眠治療は健康の要であり記憶力と深い関係にある.不眠の病態は複雑なため,いわゆる睡
眠薬による単純治療は不適切である.認知機能に悪影響を及ぼすと問題になっているBZ 薬とZ 薬の
作用は鎮静である.私は依存性,抗コリン作用が少なく,睡眠を深くする鎮静作用をもつ抗てんかん
薬を中心に不眠治療を行っている.本稿では,私の日常診療の要である大田メソッドを紹介する.
認知症予防のために睡眠は大切だが,高齢者の不眠治療は,加齢による睡眠力の低下と薬による認
知機能障害のジレンマという難しさがある.大田メソッドでは,軽度睡眠障害には,運動習慣と睡眠
環境を含む生活改善を勧め,緩やかな鎮静作用薬を処方する.睡眠障害の原因となる疾患を特定し,
それを治療することで不眠が治ることも多い.難治性睡眠障害には,私が長年の不定愁訴治療から体
系づけた抗てんかん薬,抗うつ薬などの少量処方を試す.睡眠障害の治療は薬の選択と用量が重要で
ある.