認知症治療研究会会誌
Online ISSN : 2435-8711
Print ISSN : 2189-2806
8 巻, 1 号
認知症治療研究会会誌
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 2022 年 8 巻 1 号 p. 0-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/05
    ジャーナル オープンアクセス
  • 河野 和彦
    2022 年 8 巻 1 号 p. 1-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/05
    ジャーナル オープンアクセス
  • 平川 亘
    2022 年 8 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/05
    ジャーナル オープンアクセス
    認知症治療30 年の診療経験から現在の認知症治療の問題点を考える.認知症が痴ほう症と 呼ばれていた1990 年代に使える薬剤は脳循環代謝改善薬しかなく,抗精神病薬を使った興奮症状の 調整が主であった.1999 年になりアルツハイマー型認知症の症状進行抑制薬としてドネペジルが登 場したが,期待されたものの治療成績は良くなく,自験例における評価では過去の治療成績に劣った. ドネペジル登場以降,治療開始後に易怒性や妄想が悪化する症例が増え治療が困難となった.入院で は肺炎や骨折などで入院する患者の中に副作用症例を多く経験しドネペジルを止めることで歩けな かった患者が歩けるようになる,また摂取不能の患者が逆に食事が取れるようになる改善例が続いた. これらの副作用症例は全て発売会社に報告したが臨床試験には無い報告であるとされた.発売後の臨 床経験からドネペジルを用いる治療は副作用を回避する必要があることがわかった.そこで2004 年 よりドネペジル半量投与で治療したところ,一年後評価では半量治療の方が,規定量治療よりも有効 率が高く,悪化率が低かった.2011 年には新規薬剤としてガランタミン(レミニール),リバスチグ ミン(イクセロン,リバスタッチ)・パッチ,そしてメマンチン(メマリー)が登場したが,治療薬 が増えたことで治療機会が増え副作用症例が激増した.そのため著者は副作用の啓蒙のために地域で 勉強会を行うようになった.この10 年余の活動により,地域で規定量で処方する医師は減り適量で の使用法が浸透し,治療効果を上げながら副作用症例は激減した.30 年の経験で学んだ結論は,認 知症患者を既存のエビデンスや診療ガイドラインで良くすることはできないということである.薬剤 の副作用を回避しながら,必要な認知症患者にのみ必要な量を使うという治療法が求められる.
  • 岩田 明
    2022 年 8 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/05
    ジャーナル オープンアクセス
    長久手南クリニックでは2017 年4 月から認知症外来初診患者に対して分子栄養学に関わる 血液検査を施行して,各項目に対する血中濃度に基づき,薬物補充治療および栄養食事指導を開始し た.【方法】血中アルブミン,ビタミンB1,ビタミンB12,葉酸,鉄(フェリチン,TIBC),亜鉛, コレステロール,中性脂肪値を測定して,測定値に応じた分子栄養薬物補充療法,分子栄養食事指導, 「リーキーガット症候群(腸漏れ症候群)」の合併が疑われる患者に対してグルテン・カゼイン除去食 事指導を行った.【結果】ビタミンB 群については,認知症患者4 人に1 人はビタミンB1欠乏症,10 人に1 人はビタミンB12欠乏症,5 人に1 人は葉酸欠乏症を合併すること,典型的な症状を伴わず認 知症のみが主訴であるビタミンB 欠乏症が存在した.ビタミンB1欠乏症の薬物治療による補充療法 を行うことで易怒性を改善することが出来,ウインタミンなどの抑制系薬剤を減量出来た.ビタミン B12欠乏症は,ビタミンB12を含む肉や魚介類などの食事量低下が原因であり,メチコバール内服で治 療出来ることも少なくなかった.しかし,胃癌や胃潰瘍などに対して胃全摘を行った場合は,メチコ バール内服では治療出来ず,シアノコバラミン筋注が必須であった.ビタミンB12欠乏症・葉酸欠乏 症は血中ホモシステインを増やすため全身血管で動脈硬化の原因になる.亜鉛欠乏症は,92%(289 名中269 名)に認められた.認知症専門外来初診患者289 名について亜鉛血中濃度(正常値80~130 μg/dL)を測定すると平均63 μg/dL,92% で80 μg/dL 未満,すなわち,亜鉛欠乏症と診断された. 鉄欠乏症(フェリチン正常値50~100 ng/dL)は,TCA サイクルによるATP 合成阻害だけでなく, B3・B6・葉酸(B9)欠乏と共にドーパミン・ノルアドレナリン合成阻害によるパーキンソン症状・発 達障害,セロトニン・メラトニン合成阻害による鬱病・パニック障害・不眠症を引き起こす.中性脂 肪(TG;正常値30~149 mg/dl )高値は,パンや麺,スイーツなど糖質過剰摂取による高血糖が原 因であり,TG 高値が続くと動脈硬化,脂肪肝および皮下脂肪として体重増加,最終的にはHbA1c 高値を伴う糖尿病に繋がる.最近ではリーキーガット症候群(LGS)に対するグルテンフリー・カゼ インフリー(GFCF)ダイエットを分子栄養学的食事指導に加えている.グルテンおよびカゼイン除 去食により認知症,発達障害,パーキンソン症状,自己免疫疾患,アレルギー症状,消化器症状,肥 満随伴症状の改善が得られた症例を多数経験した.一方で除去食による低タンパクにより鬱症状や語 義失語が悪化した症例も経験した.認知機能低下血中アルブミン(正常値4.1~5.0 g/dl )は分解され てアミノ酸となり脳神経伝達物質が作られるため4.3 g/dl 以上を食事指導している.コレステロール の4 分の1 は脳に存在する.コレステロール低下はミエリン鞘および細胞膜の機能低下を介して認知 機能低下の原因になる.従って,65 歳以上高齢者には高脂血症治療薬スタチンは投与してはならな い.総コレステロールは200 mg/dL 前後を維持すべきである.【結論】以上から,認知症の発症や 悪化は,ビタミン欠乏症,亜鉛欠乏症,鉄欠乏症,アルブミン欠乏症,医原性コレステロール欠乏症 などの何らかの脳の栄養障害が契機と言える.認知症改善のためには抗認知症薬を投与する前に分子 栄養学に基づく薬物補充療法・食事指導およびグルテン・カゼイン除去を行うことが必須である.
  • 佐藤 裕道
    2022 年 8 巻 1 号 p. 17-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/05
    ジャーナル オープンアクセス
  • 大田 浩右
    2022 年 8 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/05
    ジャーナル オープンアクセス
    不眠治療は健康の要であり記憶力と深い関係にある.不眠の病態は複雑なため,いわゆる睡 眠薬による単純治療は不適切である.認知機能に悪影響を及ぼすと問題になっているBZ 薬とZ 薬の 作用は鎮静である.私は依存性,抗コリン作用が少なく,睡眠を深くする鎮静作用をもつ抗てんかん 薬を中心に不眠治療を行っている.本稿では,私の日常診療の要である大田メソッドを紹介する. 認知症予防のために睡眠は大切だが,高齢者の不眠治療は,加齢による睡眠力の低下と薬による認 知機能障害のジレンマという難しさがある.大田メソッドでは,軽度睡眠障害には,運動習慣と睡眠 環境を含む生活改善を勧め,緩やかな鎮静作用薬を処方する.睡眠障害の原因となる疾患を特定し, それを治療することで不眠が治ることも多い.難治性睡眠障害には,私が長年の不定愁訴治療から体 系づけた抗てんかん薬,抗うつ薬などの少量処方を試す.睡眠障害の治療は薬の選択と用量が重要で ある.
  • 河野 和彦
    2022 年 8 巻 1 号 p. 27-37
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/05
    ジャーナル オープンアクセス
    超高齢者(90 歳以上)は,平均的な高齢者より長寿に有利な遺伝的素因や認知機能低下に 対抗するようなファクターをもつものと思われ,認知症になってもアルツハイマー型とは様相を異に し,周辺症状が軽い.さすがに平均年齢以上に生きると側頭葉てんかんや正常圧水頭症の併存も増え るが,介護抵抗があるとすれば,認知症の症状ではなく,大人の発達障害の影響であるケースもあり, 分けて理解されなければならない.超高齢者の医学は未知の点が多く,著者が経験した知識をまとめ てみたい.
  • 田頭 秀悟
    2022 年 8 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/05
    ジャーナル オープンアクセス
    外来診療,入院診療,訪問診療に続く第4 の診療形式として情報通信機器を用いて行うオン ライン診療が,新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあいまって,近年急速に注目を集めてきてい る.一方で,従来の対面診療と比べてオンライン診療という診療形式は未だ医療の中で補助的な役割 にとどまっており,十分な価値を提供しきれていない実情がある.他方でコーチングの要素を盛り込 むことで,全ての慢性疾患患者に対してオンライン診療は有効活用できる可能性を秘めている.とい うのも直接的な医療行為を行えない条件には,患者自らの主体性を促し,自らの生活行動の改善によっ て病気を克服させる潜在性があるからである.逆に言えば,「認知症」のような患者の主体性が期待し にくい状況においては,コーチング的オンライン診療による価値を提供することは難しい.また主体 性が強固に制限された「神経難病」患者においても同様の問題に直面する.本稿ではオンライン診療 専門で対応してきた当院が認知症や神経難病に対して行っている工夫や経験,教訓について紹介する.
  • 霜鳥 良雄
    2022 年 8 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/05
    ジャーナル オープンアクセス
    2004 年,脳疾患に対するリハビリテーションを支援する機器が市場にないことを知り,人 体に負担をかけない微弱な超音波治療器Ultra-Ma の開発に着手した.物理的試験で安全レベルを確 認し,微弱パワーで30 キロヘルツの長波超音波が脳血流促進に効果があること確認した.その後, 認知症患者に対しパイロット臨床試験で有用な結果を得て,レビー小体型認知症患者に対する特定臨 床研究を実施した結果,薬剤併用でBPSD の改善に期待できるに至った.
  • 中坂 義邦
    2022 年 8 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/05
    ジャーナル オープンアクセス
    DLB(Dementia with Lewy Bodies,レビー小体型認知症)は2007 年の東京都健康長寿医 療センター研究所による神経病理診断の報告によれば約20% と報告されており1),近年の高齢者にお いては急速に増加しているとみられる.2017 年になって診断基準が改訂されたものの2),診断基準の 感度の低さ,正診率の低さが以前から指摘されている.初期から記憶障害が目立たない事も一因と言 われ,早期診断のために,2020 年,McKeith らは「DLB への進展を示唆する様々な症候を伴う認知 症発症前段階(Prodromal DLB)」と定義し,軽度認知障害発症型(DLB-MCI),せん妄発症型(DLBdelirium), 精神症状発症型(DLB-psychiatric)の3 つに分類している3).実際に筆者のDLB 症例経 験でもせん妄~変容性の意識混濁に至る症例が20% 程度存在した.意識障害の治療については,リ バスチグミン(コリンエステラーゼ阻害薬),シチコリン(CDP コリン)などの有用性が報告されて いるが4),DLB 特有の薬剤過敏性という特徴により,薬剤性EPS(錐体外路症状),迷走神経反射に よる失神,心臓不整脈(QT 延長,高度徐脈など)という副作用の問題が数多く指摘され5),加齢と ともに副作用リスクが高まる高齢者が長期連用する事が困難であり,断念せざるをえない症例も少な くなかった.そこで筆者はグルタチオンを増やす可能性のあるタキシフォリンに着目し,上記の理由 で薬剤が使用困難な2~3 の症例に試用して,せん妄~変容性意識混濁に対して明確な覚醒効果を確 認した.その後も症例経験を重ね,8 例について効果を検討した.特にグルタチオン点滴治療で顕著 な反応を示す症例に対して個別差はあるもののタキシフォリンによる覚醒維持の可能性が期待でき る.
  • 松野 晋太郎
    2022 年 8 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/05
    ジャーナル オープンアクセス
    オリゴデンドロサイト(グリア細胞のひとつ)は神経細胞の軸索にミエリンを形成し記憶や 学習に重要な役割を果たしている.M ガードⓇの主成分であるヘスペリジン,ナリルチンは,未活動 の神経幹細胞の分裂を促しミエリン修復作用を有する.ドネペジル(アリセプトⓇ)では改善を認め ない近時記憶がM ガードⓇで改善する症例から,アルツハイマー型認知症の記憶障害にはミエリン損 傷が関与していると考えられる(ミエリン仮説).メマンチン(メマリーⓇ)はNMDA 受容体拮抗薬 に分類される.NMDA 受容体(N-Methyl-D-Aspartate reseptor/NMDAR)はその分布によってシナ プス内NMDAR(synaptic NMDAR/sNMDAR)とシナプス外NMDAR(extrasynaptic NMDAR/ eNMDAR)に大別される.実験的に前者は神経保護的に,後者は神経毒性的に作用する.アルツハ イマー型認知症では蓄積している異常なタンパク質によって興奮性の神経伝達物質であるグルタミン 酸が常に放出されている状態にある.ラットやマウスにおける研究では,軸索からのグルタミン酸過 剰放出によりミエリン損傷が惹起されており,低用量メマンチンはeNMDAR を阻害することで神経 毒性を抑制すると考えられる(シナプス外NMDA 受容体仮説).本論文ではミエリン修復(再ミエ リン化)作用のあるM ガードⓇとミエリン保護作用のあるメマンチン併用によるアルツハイマー型認 知症の改善効果について検討する.
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