抄録
心房細動(AF)の心拍数調節の標的は,基本的には房室結節の内向きCa2+電流である.それを低下させる薬剤としてCa拮抗薬があるものの,本剤は血管平滑筋のチャネルにも作用するため,血圧の低下により反射的交感神経増加をまねく.その結果,急性投与では反対に心拍数を増加させたり,心房不応期を短縮させて停止を困難にすることもある.一方,AFが持続すると心房筋細胞内のCa2+過負荷を回避するためにL型Ca2+電流を減少させるフィードバックが働く.それが心房不応期の短縮をまねき,リエントリー性不整脈の易誘発性に結びつくが,L型Ca2+チャネルを当初から遮断しておくのみではこのリモデリングを回避できない.T型Ca2+チャネルをも遮断することがより持続的な防止効果につながる.両型のCa2+チャネルを遮断するアミオダロンやベプリジルが動物実験や臨床例において高い抗AF効果を示している.Ca拮抗薬はAFの管理において多面的作用を発揮し,有用性が高い.