抄録
症例は55歳,男性.繰り返す上室頻拍を認めたため,アブレーションを行った.プログラム刺激で,順行性伝導は2回のjump upを認めたことにより,三重伝導路と考えられた.心室刺激時の最早期心房興奮は冠静脈洞入口部からさらに遠位側で起こっており,冠静脈造影を施行したところ,最早期心房興奮部位は冠静脈内であることを確認した.イソプロテレノール負荷下の心房期外刺激では上室頻拍は誘発できなかったが,jump upの後に心室二重応答を伴った房室結節2エコーが出現した.房室結節エコー時と心室刺激時の最早期心房興奮は一致していた.通常のKoch三角下方の解剖学的遅伝導路を通電したが,jump upのみならず逆行性伝導も残存していた.CARTOシステムで心室刺激時の心房興奮をmappingしたところ,最早期心房興奮部位はやはり冠静脈内であることを確認した.CARTOでの逆行性最早期心房興奮を指標に,温度コントロール45℃,出力制限25Wで冠静脈内の天井を通電したところ,逆行性伝導は消失した.アブレーション後に冠静脈造影を施行したが,狭窄や穿孔などの合併症はなかった.