心電図
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第29回日本心電学会学術集会 学術諮問委員会指定トピックスより 心電図ST 上昇を考える:J 波症候群
J波の機序
相庭 武司河田 宏横山 光樹日高 一郎高木 洋石橋 耕平中島 育太郎山田 優子宮本 康二岡村 英夫野田 崇里見 和浩杉町 勝草野 研吾鎌倉 史郎清水 渉
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2015 年 34 巻 4 号 p. 345-351

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抄録

これまで良性と考えられてきた早期再分極(J波)だが,一部の症例で突然死との関係やBrugada症候群,QT短縮症候群との合併が注目され,必ずしも予後良好とはいいきれない.その成因は,主に動脈灌流心筋切片(wedge)モデルの実験結果から,心外膜側の活動電位第1相notchに起因する「早期再分極」異常と,臨床の電気生理学的検査から得られた心室内伝導遅延による「脱分極」異常の両方が考えられている.しかし,脱分極と再分極は相反するものではなく,ひとつの心筋細胞の活動電位において表裏一体であり,両者が密接に関係し,特徴的な心電図異常と心室細動発生に至ると考えるべきであろう.遺伝子レベルでも特発性心室細動(早期再分極)やBrugada症候群が,必ずしも単一の遺伝子異常では説明不可能な点もこれを裏付ける考え方である.今後,心電図学のさらなる研究によって,より具体的に良性J波と不整脈の原因となる悪性J波の鑑別が可能となることを期待したい.

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© 2015 一般社団法人日本不整脈心電学会
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