2016 年 36 巻 4 号 p. 344-353
心房細動(AF)の発生には自律神経が深く関与している.心臓の調律や収縮を支配する自律神経には,主に心房近傍に局在する自律神経叢(Ganglionated plexi : GP)(内因性自律神経系)と,脳幹部中枢,頸部迷走神経幹や傍脊髄交感神経幹などの外因性自律神経系が存在し,これらが複雑な情報伝達ネットワークを形成している.このため,外因性自律神経系を修飾することにより,AFの発生を抑制する可能性があり,現在は腎交感神経アブレーションやペースメーカー•システムを用いた低出力頸部迷走神経刺激法が注目されている.ただ,これら治療法の臨床的効果については十分なデータの蓄積がなく,今後の課題である.GPアブレーションに関しては,AFに対する標準的治療法である肺静脈隔離術(PVI)に追加することで,AFの再発をPVI単独に比べてより低く抑えることができるとの報告がある.特に発作性AFでは無作為割り付け試験の報告があり,AFアブレーションの追加的手技の一つとして確立されている.GPアブレーションは,高出力高頻度ペーシングを用いてGP反応が認められた領域にアブレーションを行う選択的GPアブレーションと,GPが存在するであろう領域を治療する解剖学的GPアブレーションがある.どちらの治療効果が優れているかは明らかではない.本稿ではAF治療における侵襲的自律神経修飾法について解説する.