心電図
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心電学フロンティア2016(第51回理論心電図研究会)「J波の基礎と臨床」より
J波は脱分極波か再分極波か?
丸山 徹入江 圭森山 祥平深田 光敬
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2017 年 37 巻 2 号 p. 111-117

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抄録

QRS波の終末部に記録されるJ波は,近年,特発性心室細動との関連が指摘されている.しかし,この波形が遅延脱分極波であるのか,早期再分極波であるのかについては,いまだ議論が多い.J波がアスリートに多く見られ,アスリートの心臓では乳頭筋の肥大や肉柱化,仮性腱索を認めやすいことから,J波とこれらの心内構造物との関連も指摘されている.乳頭筋や仮性腱索にはPurkinje線維が豊富で,心室筋への伝導が遅延して(PV delay),心室不整脈の基質となる場合がある.また,J波と心室遅延電位の関係性も指摘されており,これらはJ波が遅延脱分極成分であることを示唆する.一方,多くの基礎研究は,J波が早期再分極波であることを支持している.また,正常な貫壁性の心室興奮は,心内膜側から心外膜側へ向かうが,肉柱化した乳頭筋はこれを修飾して,反対側の心室壁が早期興奮症候群に近い興奮伝播を呈するようになる(ミニデルタ波).これは,早期興奮症候群でも認めやすいJ波は,早期に興奮を終了した部分から再分極も早期化して生じるためと考えられる.J波が脱分極成分であるか,再分極成分であるかを知るためには,これらの心内構造物の興奮伝播様式や心室全体の興奮との関連を明らかにすることが不可欠である.

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