心電図
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心電学フロンティア2016(第51回理論心電図研究会)「J波の基礎と臨床」より
J波の成因と膜電流
小野 克重
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2017 年 37 巻 2 号 p. 118-125

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抄録

心電図におけるJ点とは,QRS群の終末部分とST部分の始まりの接合部(Junction)を指す.このJ点は,ときにnotch,またはslurとして観察され,このnotch(slur)全体をJ波と呼ぶ.心電図のST部分は,心室筋の脱分極が終了し再分極が始まるまでの間に,すべての心室筋がほぼ等電位にある時間帯であり,活動電位の第1~2相に相当する.ST部分は基線上に水平に位置することが原則とされるが,実際の心電図では脱分極の終了時点と再分極の開始時点が重なり合っている場合が多く,ST部分が基線に一致しないことも多い.このSTの上昇が1mm未満であるときは有意な所見であると見なされないが,心筋梗塞や心筋症の診断が否定されているにもかかわらず,著明なST上昇が認められる場合がある.この現象は心筋の早期再分極によるものとされ,早期再分極症候群(Early Repolarization Syndrome)と呼ばれる.Wasserburgerはその判断基準として,(1)ST接合部での1~4mmのST上昇,(2)凹状ST,(3)QRS波下行脚のnotch,あるいはslur,(4)ST上昇の認められる誘導でのT波増高所見,をあげている1).この早期再分極症候群に認められるQRS波下行脚のnotchはJ点そのものであるが,低体温症などの際に出現するOsborn波2)と極めて類似しており,両者は同一機序によって説明されるものと考えられている.本稿では,心電図のJ波の成り立ちを心筋の活動電位と膜電流異常によって概説する.

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