2017 年 37 巻 2 号 p. 63-70
症例は79歳女性.71歳時に胸痛にて当院初診,心エコー図で後側壁と心尖部を中心とした肥大を認め,心電図は陰性T波をともなう左室肥大所見があった.冠動脈造影では前下行枝の狭窄があり,狭心症と診断して経皮的冠動脈形成術を施行した.既往歴では,30歳時に糖尿病を発症し,インスリン治療中であった.家族歴では,母方祖母が63歳で心筋梗塞にて死亡.本例の兄弟6人は,急性心不全2人,32歳の心室細動死亡例があるが,糖尿病および難聴例はなかった.以上から,肥大型心筋症家系で狭心症を合併したものと判断して,外来経過観察とした.76歳時より心電図で前胸部がQSパターンとなり心肥大が進行,難聴が急速に進行したため,78歳時にミトコンドリア3243変異を調べたところ,heteroplasmy率が2%と判明し,かつ心臓MRI遅延造影にて広範囲の欠損が見られた.以上より,ミトコンドリア心筋症と診断した.高齢者でも,肥大型心筋症の鑑別診断には本症を考慮する必要がある.ミトコンドリア心筋症において,前胸部誘導でのQSパターンは診断の手掛かりとなる場合がある.また,ミトコンドリア心筋症の合併症として,血管平滑筋障害による狭心症を考慮する必要があることを示唆する症例と考えられたため,報告する.