2019 年 39 巻 1 号 p. 5-15
後天性QT延長症候群は薬剤,低カリウム血症,高度徐脈などでQT延長が顕在化し,致死性不整脈が出現する病態である.本研究は日本,フランス,イタリアの計8施設による国際共同研究で,後天性QT延長症候群188症例(55±20歳,女性140例)を対象に,先天性QT延長症候群において頻度の高い5つの責任遺伝子(KCNQ1,KCNH2,SCN5A,KCNE1,KCNE2)の変異を検索した.後天性QT延長症候群のQTc間隔は453±39msecで,先天性QT延長症候群家系の変異保因者より短いが(n=1938,478±46msec,p<0.001),非保因者より延長していた(n=441,406±26msec,p<0.001).遺伝子検索の結果,後天性QT延長症候群の28%に遺伝子変異が同定された.先天性と比して後天性QT延長症候群ではKCNH2変異が多く,特に後天的要因がない状態でQTc間隔が正常な場合,責任遺伝子の64%はKCNH2であった.有症候者,40歳未満での発症,後天的要因がない状態でのQTc間隔が440msec超の症例で遺伝子変異同定率が高く,それぞれを1点とし合計点を算出した場合,3点,2点,1点,0点での保因者の比率はそれぞれ63%,31%,11%,0%であった.臨床病態から遺伝子検査の必要性を考慮し,検査に要する費用を削減することで,費用対効果が期待できると考えられる.(心電図,2019;39:5~15)