2019 年 39 巻 2 号 p. 155-159
心房細動そのものは,ただちに生命に危険を及ぼす不整脈ではない.高齢者にはかなりの頻度で見られるありふれた疾患である.ところが,超高齢社会では患者数が多いのと,潜在的に血栓症を起こすことなどの理由で,対応が迫られる不整脈である.慢性化した心房細動のリズムを洞調律に戻すのは難しいが,発作性心房細動に対処する治療は行われる.そのさい,心機能を落としたり,さらなる不整脈を誘発しないことが肝心である.ヒトでの検証が困難な場合には動物モデルが代用されるが,心房細動に関する動物モデル,とりわけげっ歯類モデルは少ない.さまざまな遺伝子操作動物が,シグナル伝達などの病態解明に有用であることを考えると,マウスで心房細動が再現できれば有意義な研究が行えるのではないかと考えた.われわれは既存のマウス心房細動モデルに,カテコラミン負荷を追加することで,新しい心房細動モデルを開発した.このモデルは不整脈の持続時間が長いのが特徴である.本モデルを用いて,細胞内cAMPシグナルを標的にしつつも,既存のβ遮断薬治療に代わる薬物治療を検討した.Epacはβ受容体シグナルの下流にあり,カルシウム制御にかかわる.直接的な心機能亢進に関与しないが,その阻害が不整脈の治療に役に立つことが,さまざまな実験系で明らかになってきた.